大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)14577号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕

二 (責任原因について)

そこで次に被告の本件事故に対する責任の有無について判断することにする。

1 自賠法三条による責任について

被告が加害車を所有していたこと、被告が自動車販売業を営むものであること、被告が高井を右業務に使用していること、高井が加害車を今泉に引き渡したことについては当事者間に争いがない。そして<証拠>によれば、以下の事実を認めることができる。

高井は、被告の世田谷営業所に勤務し中古車係をしていたこと、高井は、中学時代の友人訴外久村某から高校時代の友人である今泉が自動車の運転免許を取得するために自動車教習所に通つていることを聞き、今泉に免許を取つたら被告から車を買つてくれるよう頼んだこと、昭和四三年六月中旬ごろ、右久村から今泉が自動車の運転免許を取つたから同人に電話をかけてみるようすすめられたので、高井は電話で今泉に自動車の購入方を勤誘したこと、今泉は、同月二八、九日ごろ右営業所に車を見に行つて加害車を試運転し、気に入つたので、それを代金一五万円、割販手数料一万六一〇〇円、支払方法は頭金四万円を現金で支払い、残額を同年八月から昭和四四年一〇月まで毎月末日限り八〇〇〇円宛(ただし、最終回は一万四一〇〇円)支払うこととし、支払のために約束手形を振出し、交付すること、被告は、今泉が右債務を完済するまで加害車の所有権を留保し、債務完済と同時にその所有権を今泉に移転するものとすること、納車予定日は同年七月六日とすることなどの約定で売買契約をしたこと、ただし、今泉は学生だつたので買主名義は母親の直枝にする方がよいと考え後に同人の承諾を得るつもりで右売買契約の買主名義は直枝にしたこと、そしてそのときの今泉と高井の話合いでは、右納車予定日に今泉は右頭金および手形を被告に持参して自動車割賦売買契約書を作成し、被告は加害車を引き渡すことになつていたこと、今泉は同月八日右頭金のみを持参し、手形や右契約書を作成するための印鑑を持つてこなかつたが、今泉と高井が友人であつたため手形は銀行の口座ができ次第持参し、契約書も後日今泉が印鑑を持参して作成することにして高井は加害車を今泉に引き渡したこと。

以上の事実を認めることができ、<反証排斥>。

右事実によれば、被告は、昭和四三年六月二八、九日ごろ今泉と加害車の所有権留保付割賦販売契約を締結し、右契約に基づき同年七月八日今泉に加害車を引き渡したことを認めることができるので、被告は本件事故当時加害車の運行に対する支配を喪失していたというべきであるから、被告には自賠法三条による責任がないといわなければならない。

2 民法七一五条一項による責任について

高井が今泉から自動車の運転免許を取得した旨聞いていたこと、高井が今泉に加害車を引き渡すにあたり免許証の提示を求めなかつたことおよび今泉が本件事故当時加害車を運転していたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、今泉は、いわゆる指定自動車教習所を卒業し、運転免許試験のうち自動車等の運転について必要な適性および技能は免除されていたが、公安委員会の実施した自動車等および道路の交通に関する法令についての知識および自動車等の構造および取扱方法の試験には失敗したため、自動車運転免許を有していなかつたこと、しかし、今泉は、体裁が悪いので高井には免許を取つたといつたこと、高井は、今泉の前記試運転の際同乗したが、今泉の運転技能には不安を感じなかつたことが認められる。

右事実に前記1の事実を併せ考えると、高井が自動車販売業務に従事するものであるとしても、同人に今泉に対し運転免許証の提示を求めるなどして今泉が真実運転免許を有しているか否かを確認すべきことを要求することは難きを強いるものであつて、したがつて、高井が加害車を今泉に引き渡す際同人の運転免許の有無を確認しなかつたからといつて、今泉の無免許運転を幇助しその他不法行為をなして本件事故を惹起したとはいえない筋合いである。そうとすれば、高井の不法行為責任を前提とする被告の使用者責任はこれを認めるに由ないというべきである。(並木茂)

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